イタチごっこ?‐再度ビクトリア市のホームレス問題

 私の記憶では、COVID-19についてカナダ政府がそれ迄よりも真剣味を見せたのは、トゥルードウ首相の妻Sophie Grégoire Trudeau夫人が、夫と共に招待された英国での講演会から戻り、陽性反応を示してからだったように思う。

 

  

 

それは3月13日のことで、もちろん彼女はすぐに2週間の自主隔離に入り、夫のトゥルードウ首相も官邸の執務室から一人で日々の実務を執り行った。

 

 

 これを契機にオタワの姿勢に「対岸の火事ではいられない」とした緊張感が走ったようだ。

 

 この雰囲気はBC州でも同じで、特に当時のビクトリア(以下V)市民の反応には、それほどの切迫感はなかった。

 

 すでに多くの感染者、死亡者が出ていたヨーロッパ旅行から戻ったある夫婦は、帰国の翌日に遠来の客に会い、あまつさえレストランで食事さえしたのである。

 

 その後夫妻は高熱や多汗症状を呈したが、親しい医者との緊密な連携のもとで3週間半の自己隔離を終えた。しかし彼らは「毎年今頃は花粉症になるので」と言い、コロナの陽性であったかどうかは分からないと弁明する。

 

 ことほど左様に当時は「本土とは海峡を隔てているから大丈夫」と楽観視するV市民は多かったのだ。

 

 それからの二ヶ月半の間に、数々の規制が設けられたのは周知の通り。中でも「2m間隔」の決まりは、常に海風の吹く海岸を歩く際にも、前後左右から来る人々を避けて通るようになった。

 

 まだこの社会的制約に慣れていなかった当初、私は自分が東洋人だからそうされるのでない事は十分承知してはいても、その度に真珠湾攻撃で第二次世界大戦が勃発した直後の日系人に思いを馳せた。

 

 容姿が西洋人でないことで接近することを避けられ、時には「JAP!」とののしられながら、嫌がらせと差別を受けたのではないかと・・・。

 

 その後COVID-19の取り締まりが日に日に厳しくなる中、私の心に掛かったのはダウンタウンのQuadra St.Vancouver St.にあるホームレス互助機関Our Place周辺に増え続けるテント生活をする人々であった。

 

Our Place前の通常時の風景

 

 記憶にある読者も多い事と思うが、2016年にBC州裁判所の裏地に出来たTent Cityが、市の大問題に発展した事がある。

 

 周辺の住民からの苦情は、不衛生な状況下で生じる害虫、ネズミ、トカゲ、蛇などばかりではなく、昼夜を問わずの騒音、暴行、売春、麻薬売買や薬物の過剰摂取問題などが後を絶たず、さながら不法地帯になってしまった感があった。

 

2016年にBC州裁判所の裏に出来たTent City。これは初期の頃のテントで終了時にはこの倍に膨れ上がった

 

 最終的にはBC州政府、V市、関係互助機関が幾つもの既存の建物を改築したり、低所得者用のアパートを建築したりして、裁判所の裏からホームレスの姿は消えた。

 

今は整備され遊園地に変身した

 

 跡地は1m以上土を掘って土壌を入れ替え、今は子供の遊園地に衣替えしている。当時私は何回もここに通い彼等の声を聞き記事にしたが、当然ながらその一人一人にそれぞれの物語があり、一括りに出来る問題でない事を痛感した。

 

 そして今回はCOVID-19の「2m間隔」規制に源を発し、4年前と同じように数々のテントがOur Place周辺とMayfair Shopping Centre近くのTopaz Parkに出現した。

 

日に日に増えて行ったOur Place前のテント群


Topaz Parkに広がったテント群

 

 つまり2m間隔規制のため、それまでのように各種のシェルターに寝泊まりする人数が限られるようになったため、町から人影が消えたのに比例して、テントの数が日に日に増大して行った。

 

 当然ながら周辺の市民からの苦情は絶えず、V市とBC州政府は必死になって解決に奔走し、メディアもそのニュースを追い続けている。

 この原稿を書いている525日現在の結果から記せば、520日を一応の目途に、両領域から彼らを一掃する大作戦を展開した。

 

 まずは州政府が市内のComfort Inn and Suites (3020 Blanshard St)を$18.5ミリオンで買い上げ92人を収容し、ホッケー・アリーナのSave-On-Food Memorial Centreに簡易の囲いとベッドを設け45人を移動させた。

 

Our Place前のテントは一応消えて、今は鉄条網だけが残されている

 

 また今までシェルターとして使用していた幾つかの場所にも、人と人との間隔を置いて何人かを継続的に収容している。こうした施設には常時医療関係者や彼らの間で一番問題である薬物の管理をする人々を置き、食事も提供する。

 

 加えて長期的な計画として、低コストのアパート建設のためにOur Place近くの土地を、約$9.6ミリオンで購買してもいる。

 

 だがこのようにして政府が用意した宿泊施設には行かない(行きたくない)テント住民が、今度は海岸沿いやBeacon Hillの広域に増加し、V市は625日迄期限を延長して策を講じることにしている。

6月上旬の今 Beacon Hill Parkにはそこここにこうしたテントが幾つも張られている。

 

 市民の憩いの場である筈の公園が、またたく間に次のTent Cityに化すのではないかとの懸念があり、それによるウィルスの拡散も心配される。

 

 こうなるとまさに『イタチごっこ』の感があるものの、ホームレスの解決は世界のどの町も抱える共通の問題である。

 

 彼らにきちんとした宿泊施設を提供するのは最重要課題である事は言を俟たないものの、それだけではホームレス問題は解決しない。その後彼等をどの様にして社会復帰させるか、次に来る大きな課題である。

 でなければ、何時まで経ってもホームレス問題は「いたちごっこ」で終わってしまう。

 

 最近耳にしたイタリア・フローレンス市郊外にある、薬物の過剰摂取からの立ち直りを念頭に置いた更生施設のウェブサイトを紹介しよう。https://www.sanpatrignano.com/

 立ち直り後の職業訓練も行い、一人の入居者を最後まで面倒を見ようとする姿勢が伺える。

 

 西海岸ではバンクーバー市、V 市の多くのホームレスが、薬物過剰摂取で過去4年間に5000人程が死亡している。路上生活になったから薬物を使用するのか、或いはその逆かは定かでないが、この施設が大変に興味深い取り組みをしていることに感銘を受けた。是非一見をお勧めする。

 

 〜*〜*〜*〜

 

 これは全くの余談だが、カナダ政府がいち早く設立したCanada Emergency Response Benefit (CERB)は、仕事を失った人々(フリーランス含)への補助金制度で、一人当たり一ヶ月$2000.00貰えることになった。

 

 だがこの恩恵に預かれる人の対象が、真にカナダ的というのだろうか実に鷹揚で、以前一ヶ月間にそれだけの収入を得ていなかった人、またコロナが直接の原因で職を失ったわけではない人でも、申請さえすれば銀行に自動振り込みになるのだ。

 何時の時もそうであるように、制度を悪用する人も多いとのことで、今後税務署はそうした人の摘発に時間を取られると言う。

 

 この補助金制度は、アルバイトでもOKで、そのことに感謝するあるワーキングホリデイ―でトロントに滞在する女性(千葉出身25歳)からの投書が過日朝日新聞に掲載された。

 

以下抜粋:

 

 『 去年5月からワーキングホリデー制度を利用しカナダ・トロントの飲食店でアルバイト。3月から営業はテイクアウトのみで一時解雇された。

 

 この先をどうしようと考えていた矢先、政府から緊急対応給付金(CERB)が発表された。失職した人に月額約16万円(2000カナダドル)、最大4カ月間給付で、申請方法はいたって簡単。オンラインで質問項目に答えていき、後日、郵送でパスワードをもらって再度質問事項に答え、受理を待ちます。私の場合、その後3日ほどで現地の口座に入金されていました。4月8日のことで、一時滞在中の外国人労働者の私が政府から給付金をもらえたことに驚いた』

とある。

 

 

 この支給期間は、最初は向こう4か月の予定だったが、5月中旬には更に二ヶ月延長され合計6ヵ月間になった。

 

  日本は一人10万円を支給すると政府が決定した。もちろんないよりはましながら、仕事を解雇されたり、客足が途絶えてビジネスが破産した人々はこれ位の額で何が出来ると言うのだろうか。

 

  横浜に住む友人の話では、5月29日現在まだ支給されていないと言う。5月23日付けの毎日新聞に発表された世論調査によると、安倍首相の率いる内閣の支持率は27%、不支持率が64%となっている。

 

 また6月7日の日経世論調査では支持38%、不支持51%と出ており、益々地に落ちる安倍内閣ではある。

 

沢山出回っている顎まで隠れるマスクではないのを頑固に付け続ける安倍首相

 

 

 

 

 

 

 



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